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偏光板保護フィルムとは?その必要性から保護フィルムの選び方までを解説

近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを搭載した機器の値段は安価になり、消費者はディスプレイを購入しやすくなりました。一方、それらを開発・供給するメーカーは、消費者が意識することのない画面のちらつき防止、映り込み防止、汚れ防止、高精細化などを実現する必要があり、偏光板や部材の表面処理、保護フィルムなどの細かな仕様を改善すべく、より良い提供事業者を探している担当者も多いのではないでしょうか。 本コラムでは、偏光板や保護フィルムの必要性や特徴に触れながら、偏光板保護フィルムの選び方について解説します。 偏光板とは 偏光板とは、振動する光を一定の方向だけに振動するように「光の振動方向を整える」ものです。 そもそも光は、360度の全方向に振動している電磁波です。例えば、テレビの液晶ディスプレイから偏光板を外すと画面の映像を人の目で見ることはできません。それは、液晶ディスプレイからの光が360度全方向に振動しているため、特定の光や映像を捉えることができないからです。偏光板を通していなければ、ディスプレイは真っ白な板が光を発しているように見えてしまうのです。 このような状態から映像を視認できるようにするためには、光の振動を一定の方向に整える必要があります。そこで利用されるのが偏光板です。光の振動を偏光板で一定方向に整えることで、人の目に映像が見えるようになります。つまり、テレビやパソコンのディスプレイに表示される映像(光)を見るためには偏光板が不可欠だということです。 偏光板保護フィルムとは ここまでディスプレイ上で映像などを視認するための偏光板の必要性についてお伝えしてきましたが、ここからはディスプレイ製造工程で偏光板を保護するために利用される偏光板保護フィルムの特徴や用途を解説します。 偏光板保護フィルムの特徴 偏光板保護フィルムは製造工程や輸送時・保管時のキズや異物から偏光板を保護する目的で使用されます。そのため要求される特徴としては、剥離した際に被着体へ糊残りなどの影響がないことや帯電防止・防汚性能があることが挙げられます。また、貼合した状態で外観検査やインライン検査ができるように、高透明、欠点数少、印字性付与なども求められます。 近年のテレビやパソコン、スマートフォンといった、ディスプレイ部材の製造工程のオープンセル化により、偏光板保護フィルムが貼合されている期間が長くなっています。そこでポイントとなるのが経時変化です。偏光板保護フィルムの劣化が剥離時のディスプレイの破損や外観不具合を引き起こしてしまう可能性があるため時間の経過に伴う変化を抑えることがディスプレイの保護にも大きく関係します。 【偏光板保護フィルムの特徴】 剥離による影響がない 帯電防止性能 防汚性能 高透明性 欠点数少 印字性がある 経時変化の安定性 偏光板保護フィルムの用途                                          多くのディスプレイの製造工程には偏光板保護フィルムが使用されております。上述しているように、液晶テレビのディスプレイやパソコンの液晶ディスプレイ、近年では有機ELを利用したディスプレイにも偏光板は必須です。私たちが毎日使うスマートフォンの画面にも偏光板が使用されており、ディスプレイの市場とともに偏光板保護フィルムの需要も続いていくと考えられています。 【偏光板保護フィルムの用途】 テレビ パソコン スマートフォン端末 タブレット端末 ドライブレコーダー デジタルカメラ  スマートウォッチ など 偏光板保護フィルムの選び方 それでは、実際に偏光板に使用する偏光板保護フィルムの選び方を見ていきましょう。 偏光板保護フィルムを選ぶ際の主なポイントは、前述したとおり高透明で光学特性に優れ欠点が少ないこと、剥離時に被着体への影響がないこと。また、経時変化が安定していることも欠かせません。これらの製品を提供する企業の選び方も重要です。素材を提供する企業として、高品質なものを提供できる技術やノウハウを持っていること、そして、各種偏光板に対応した粘着物性要求やフィルムの表面処理の性能付加(帯電防止や傷防止など)に対して、柔軟に変更処理をしてくれるかどうかも大切なポイントであると言えます。 偏光板保護フィルムを選ぶ際のチェックポイントには以下のようなものが挙げられます。 高透明で欠点が少なく、外観が良いもの 指紋や汚れが目立たないもの 経時変化の安定性があるもの 偏光板保護フィルムを提供する企業の選ぶ際のチェックポイントは以下です。 短期間での品質改善にも協力してくれる企業を選ぶ 各種偏光板に対応した粘着物性要求に対応してくれる企業を選ぶ 表面処理変更による性能付加(帯電防止、印字性、傷防止、経時劣化防止)などに対応してくれる企業を選ぶ これらのポイントを満たす製品および企業を見極めることが、高品質な製品を保つための要件となります。 まとめ 偏光板保護フィルムの質によって、テレビやパソコン、スマートフォンといったディスプレイを持つ製品の製造工程の安定性が大きく左右されます。偏光板保護フィルムを選定するときには、慎重に各社の特徴や技術や品質をチェックして、採用する製品を選ばなければなりません。そのためには、長年の技術やノウハウを蓄積し、常に新しい技術や製品を生み出している企業を選ぶことが安心ポイントであり、製品の品質向上を実現するポイントでもあります。 偏光板保護フィルムを提供するZACROS株式会社では、情報電子事業分野はもちろん、ライフサイエンス事業や医療分野、建築・土木資材事業分野にも、光学フィルムをはじめとしたさまざまな製品を提供しているため、その幅広いノウハウと技術が偏光板保護フィルムにも生かされています。

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委託加工のメリットとは?委託加工の流れや技術をはじめ委託加工会社の選び方までを解説

加工はあらゆるモノの製造工程の基本とも言えます。その技術は日々進歩していますが、最新の技術を提供する企業のほとんどは、長年の経験とノウハウを持っています。メーカーとしては、設備やリソース不足の解消や、短期間での新製品対応、あるいは上がるオーダーレベルに対応できる加工業者を選び、かつコスト削減も考え「加工」は外部のプロフェッショナルに依頼することも選択肢のひとつに挙がるでしょう。委託加工についての基本的な知識や、委託加工をすることのメリットを確認しながら、委託加工のおおまかな流れと委託加工業者の選定方法を解説します。 委託加工とは 委託加工とは、メーカーが原材料を渡し、受託者が加工をするといった製造工程のなかの方法のひとつです。 モノの製造工程には必ず「加工」工程があります。しかし、製品を開発・製造するメーカーがすべての工程を行うとは限りません。例えば、フィルム加工やシート加工などの工程において、メーカーだけでは生産能力が安定しないという課題の解決や、設備をはじめとしたメーカーでは足りないリソースの補完をしたい場合に、専門技術を持つパートナーと開発・製造を行うのもひとつの手法なのです。これは、多くの製造工程で取り入れられており、リスクを最小限に大きなベネフィットを得られる手法でもあります。 委託加工のメリット 開発・製造を行うメーカーが自社ですべての工程をまかなう場合もありますが、委託加工をすることによって専門技術の提供はもちろん、生産設備のリソース不足や新製品への短期対応・改善もサポートしてもらえるというメリットがあります。また、メーカーが自社で設備やリソースを整備するのに比べてコスト削減・スケジュールの短縮ができたり、信頼のおける技術力を提供してもらえたりするという利点においても、委託加工は有用な手段だと言えるでしょう。 委託加工のメリットをまとめると以下のようになります。 信用に足る専門技術を提供してもらえる 生産設備をメーカー自身が用意する必要がなくなる 設備や人員といったリソース不足を補える 新製品への短期対応や改善をサポートしてもらえる コスト削減につながる 委託加工における主な技術の種類 委託加工での技術は加工を請け負う企業によってさまざまですが、主に「力」「熱」「電気」「化学」などに分けられます。それぞれの技術を合わせて加工処理をする技術も多いため、完全にカテゴリ分けをすることは難しいのですが、おおまかにはこのような技術を組み合わせた加工が行われます。 例えば、力で引き伸ばす工程がないキャストフィルムとして加工するキャスト機や、スリット加工をするためのスリット機、熱溶融等により樹脂をそのまま製膜できる押し出し機などは、「力」や「熱」、「冷却」などの技術を組み合わせることで、メーカーが求める最適な加工を実現させているのです。 このように、どのような技術を組み合わせて加工するかといった部分も、企業のノウハウや技術力だと言えます。もちろん、利用する技術や設備などのリソースは、委託加工を請け負う企業によっても異なりますので、メーカー側が求める技術とノウハウを持つ企業を選定することが重要です。 委託加工会社の選び方 委託加工を請け負う企業はさまざまですので、基本的にはメーカー側の要望を満たし伴走してくれる企業を選択することは大前提です。そのうえで、委託加工を検討する際には、先述したメリットをどのくらい得られるか、そしてメーカー側の要望に対してどのくらい柔軟な対応が可能かという視点で委託加工会社を選定することが大切です。 委託加工会社に期待するメリットを意識して優先順位をつけるなど、委託する前にあらかじめ選定ポイントを明確化しておく必要があります。メーカーでは加工に関する設備や人的リソースが足りない、コストを削減したい、確かな技術力のある企業に任せたいなどの要望に応えられるかといった選定基準が想定されます。 【選定ポイント】 専門技術に信頼性があること:必要な分野のノウハウや技術に精通している 加工に必要な機器が利用できること:フィルム加工においては、コーティング、押し出しラミネート、キャスティング等を行えるテストコーター、量産機を有し試作から利用できる など 設備や人員が整っていること:分野に精通した営業や技術担当者がいることや、各種設備を有しているなど 短時間での対応が可能なこと:短納期であった場合にもサポートしてくれる コスト削減につながること:高品質で低コストである 基本的には上記を満たすメーカーのなかから、委託加工企業を選定するとよいでしょう。さらに言えば、試作段階から量産時を見据えたシステム作りを提案してもらえれば安心ですし、品質規格取り決めなどをサポートしてもらえることを基準に含めるなど、想定できるメリットを選定ポイントとして明確化しておくことをおすすめします。 委託加工の流れ 最後に、実際に委託加工を行う場合の流れを確認していきましょう。 委託加工を依頼する場合には、まずはメーカーから専門の企業への問い合わせから始まります。 問い合わせ:メーカーの担当者からホームページやEメール、電話などで委託加工を行う企業への問い合わせを行う 打ち合わせ:メーカーの担当者と委託加工先の営業担当者や技術担当者などと、実験・試作内容の要望についてのすり合わせを行う ラボ機検討:専門の企業がテストコーターなどを使用したサンプルを作成する(サンプル作成に利用する部材量などを明確化しておくとスムーズでしょう) 評価:完成したサンプルを提出してもらい、メーカー側で評価を行う 実機での試作:提出されたサンプル評価に基づき、専門の企業は実機試作を行う 委託契約:試作品を確認後、委託契約を結ぶ 加工仕様などを明確化してサンプルの評価から試作を行い、委託加工を契約するといった流れとなります。また、場合によっては「3. ラボ機検討」の前後のステップで「秘密保持契約等」を検討する場合もあります。 まとめ 委託加工には、メーカーにはないノウハウや専門技術を享受できることや、設備や人的リソースをメーカー側で用意しなくてよいというメリットがあります。また、委託先企業の豊富な経験やノウハウで、詳細な委託要件のヒアリングや短納期についてもサポートしてくれるようなサービスがあると安心です。 ZACROS株式会社の委託加工サービスは、長年培った技術とノウハウはもちろん、製品設計を含めた開発支援から、コーティング、押し出しラミネート、キャスティングなどの幅広い試作や量産体制まで対応しています。加えて、開発段階から量産を見据え、限られた材料や費用、時間の中でもユーザーの要望に合わせたシステム作りを提供し、さらに信頼できる品質保証体制も整えています。 お問い合わせはこちらZACROS株式会社の委託加工サービス(CCS)についてはこちら

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異なる種類の金属を接合する「異種金属接合」とは?注目されている背景から金属接合の種類と選び方までを解説

異種金属接合とは 「異種金属接合」とは、異なる種類の金属材料をつなぎ合わせる技術です。これに類似する「金属接合」は、異なる種類の金属だけでなく、同種の金属同士を接合する場合にも用いられます。 異種金属接合が注目される背景 「異種金属接合」は、小型化・軽量化・省エネ化のニーズの高まりを受け、ロボット・モビリティ分野で注目されています。各メーカーは製品のさらなる高機能化のため、複数の金属それぞれの性質を組み合わせた高性能・軽量かつ低コストの部品開発を推し進めています。これらの製造に必要なのが異なる金属をつなぎ合わせる「異種金属接合」です。ところが金属材料の組み合わせにより接合強度の確保に課題が生じるケースがあり、これを解決する接合方法や接合材が求められています。 例えば、EV自動車(電気自動車)の車体に使用される素材のすべてを軽量な樹脂素材に置き換えることは、現時点では不可能です。硬度のあるアルミニウム合金やマグネシウム合金、炭素繊維強化複合材料に取り換えれば車体の軽量化はできますが、材料コストや製造コストの面から実用的ではありません。そこで求められるのが、様々な金属や金属を含む複合材などを、適した部分に使用する方法であり、その技術が「異種金属接合」なのです。 異種金属接合の種類とぞれぞれの特徴・用途 異種金属接合の種類 異種金属接合は、高性能で扱いやすい製品を作るうえで必要な接合方法です。 さまざまな部材を組み合わせることで、軽量化や低コスト化といったメリットが得られます。 「異種金属接合」は大きく「化学的接合」「機械的接合」「材料的接合」の3種類に分類されます。以下ではそれぞれの特徴や主な用途をご紹介します。 化学的接合 化学的接合とは、原子やイオン、分子の間に働く力を利用したファン・デル・ワールス力やアンカー効果などを利用して、材料同士を強固に接合させる化学的接合方法です。接合に用いる材料を接着剤といいます。接着剤の起源は石器時代からといわれるほど歴史が古く、現代の異種金属接合でも利用されている接合法です。 化学的接合に使われる接着剤の代表的な種類として、以下が挙げられます。 嫌気性接着剤 紫外線硬化型接着剤 瞬間接着剤 弾性接着剤 またフィルム状のホットメルト系接着剤は以下のような特徴と用途があります。 特徴 異素材接合:金属やセラミック、フィルムなどの接合に対応しうる 軽量:仕上がりを軽く、小型化しやすい 付加機能:接着剤の成分処方を調整し付加機能をつけられる 容易な作業性:塗布・貼付するだけで接合できる メンテナンス不要 用途 あらゆる素材同士の接合 軽量化が求められるシーンでの接合 長期耐久性が求められるシーンでの接合 接着以外の付加機能が求められるシーンでの接合 機械的接合 機械的接合とは、ねじや圧力などによって接合する方法です。 ボルトやナットの2部品で締め付けて接合したり、プレス機でシャフトを穴に押し込んだりすることで、部材を接合します。そのほかに機械的接合には、焼嵌めやカシメといった方法もあります。 特徴 ねじ固定:安価に接合でき、メンテナンス時には容易に分解できる 圧力固定:強度のある異なる材質同士を接着剤と圧力で接合するため、強固な接合が可能 焼嵌め固定:機械のシャフトの接合などに使用される方法で、高温度に加熱して熱膨張を利用することで接合する カシメ固定:板形状の2枚の部品を、塑性変形を用いて接合する。接合後に分解する製品には不向き 用途 上述した接合方法のそれぞれの用途を見ていきましょう。 ねじ固定:機器全般、送電線用鉄塔、気密機械、家電製品のカバー など 圧力固定:シャフトを使う円盤状の部品、ベースへのピン立て など 焼嵌め固定: 鉄道車輪などの車輪とシャフト、工作機械焼嵌めチャック など カシメ固定:布や紙の接合、橋梁などの構造物、板金の接合 など 材料的接合 材料的接合とは、部材を溶融して接合する溶融接合や、基盤のハンダ付けなどの液相接合のような方法のことです。主に、溶融接合にはアーク溶接やガス溶接、液相接合にはハンダ付けやロウ付け、固相接合にはFSWなどがあります。 特徴 材料的接合には、以下のような特徴が挙げられます。 溶融接合:部材を溶融させることで接合する方法溶接物と電極間にアークを発生させるアーク溶接は自動化しやすいのですが、変形しやすいものです。ガス溶接は酸素とアセチレンガスを燃焼させることで金属の溶融接合を行います。その他、大電力を通電した発熱で金属を溶融する抵抗溶接や、レーザー光の照射で微細な溶接を行うレーザー溶接もあります。 液相接合:ロウ付けやハンダ付けで接合する方法融解点の低いロウなどを溶かしたり、シート状のロウを利用したりすることで、部材を融解することなく接合できます。銅とアルミニウム版、配管や自動車の熱交換部品などの接合方法に用いられる方法です。また、融解点の低いハンダは、濡れ性と表面張力で形状を維持して接合します。 固相接合:部材を溶解せずに固相状態で加熱し、さらに加圧することで接合する方法英名ではFSW(Friction Stir Welding)といいますが、これは比較的新しい技術で、部材に圧力をかけて軟化させ、別の部材と接合する方法です。 用途 自動車のフレーム 電子機器の筐体フレーム ステンレス・鉄・チタンの接合 自動車ボディーや小型精密機械部品の接合 異種金属接合方法の選び方 異種金属接合の方法にはいくつもの種類があります。どの方法を選ぶかは、製品の性質によって大きく左右されます。また、均一に接合したい、生産性の効率化を図りたいといった視点からも方法を選択する必要があります。 異種金属接合の方法の選び方のポイントとしては、以下を参考にするとよいでしょう。 耐久性 接着強度 接着剤の種類 用途への適性 ZACROS株式会社の関連製品ラインナップ ZACROS株式会社ではフィルム状のホットメルト系接着シート「メタシール」、リチウムイオン電池のタブリード用接着フィルム「タブシール」を提供しています。 メタシール・タブシール フィルム状のホットメルト接着シートのため接合後の二次工程の加工が容易です。「メタシール」は様々な異素材を接合するシリーズで、「タブシール」はリチウムイオン電池のタブ電極を接着するため、耐電解液特性を備えています。 特徴 異なる素材の接合:金属やセラミック、フィルムなどの接合 均一な接着:厚みのバラツキを抑え、塗布ムラもなく均一に接合 加工性:フィルム状の接着剤は要望に合わせた打ち抜きが可能 対応材料 金属:SUS、アルミ、ニッケル、チタン など セラミック:ガラス、石膏、ファインセラミック など フィルム:PPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム、フッ素フィルム など サンプルのお求めは下記お問い合わせよりご連絡ください。 関連記事

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OCAフィルム(光学透明粘着フィルム)とは?特徴や種類から選び方までを解説

OLED、LCDに限らず、ディスプレイは従来の長方形からフリーデザインへの流れがあります。曲面など接着剤では対応しづらい形状には、一般的にOCAと呼ばれる基材レスの粘着フィルムが注目されています。信頼性を確保しつつ、さまざまなモードのディスプレイでコントラストなどの付加価値を付与していくには、開発ができるメーカーと協力しなければなりません。そこで本コラムでは、粘着フィルムの基本的な特徴や用途から、選び方までを解説します。 OCAフィルムとは                                          日本工業規格(JIS)では、粘着テープを「基材の片面又は両面に粘着剤層を設け、ロール状に巻いたものの総称」と定義しています。ディスプレイ用に対しては使用部位によってPETフィルムや発泡体を基材とした粘着テープが使われることがありますが、表示に関係する用途では基材の透明性や位相差の問題から、基材がなく光学的に高い透明性を持つOCA(Optically-clear Adhesive)が用いられます。 OCAは、ガラスやアクリルなどを貼り合わせる部材として活用されます。例えばディスプレイは、貼り合わせたガラスやアクリルなどの部材の間に空気層があると、界面で光が反射してしまいます。OCAは、このような状態の空間に充てんして、コントラストを向上させ視認性を改善する素材なのです。また、ディスプレイの視認性を損なわないためにも、光学的に高透明な素材であることが要求される粘着素材です。OCA工法としては、フィルム状に加工された粘着剤でパネルとガラスを真空中で貼り合わせるといった手法があります。 OCAは、私たちの生活に欠かせないスマートフォン、身近な家電であるタブレット端末やパソコン、テレビ、自動車に搭載するカーナビなどのディスプレイに利用されていますので、現代の生活には欠かせない素材のひとつでもあるのです。 弊社はこのような一般的なOCAよりも、それにさまざまな特殊機能を付与したものを特徴としていることから、この製品群を粘着フィルムと称しています。 弊社の製品情報についてはこちら OCAフィルムの特徴 それでは、粘着フィルムにはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、粘着フィルムの特徴について見ていきましょう。 均一な透明性 一般的なOCAに必須である光学的な透明性を持っていることです。なぜなら、OCAには、空気層を充填するとともに、ディスプレイの視認性を損なわない性能が必要だからです。ディスプレイの光がOCAによって減少するようでは製品のクオリティを落としてしまうので、均一で高い透明性が必須であるというわけです。 光拡散性 高い透過率を維持しながら光拡散効果も持つことが拡散粘着フィルムの特徴です。選択する際には光が拡散する割合である「ヘイズ」を確認することが大切です。光を効率的に利用することで、ディスプレイの高い視認性と省エネ化を実現するのです。 屈折率調整機能 屈折率を調整することで、視認性を向上させる屈折率調整粘着フィルムもあります。素材間の屈折率差が少なくなるほど、反射ロスを抑えることができるためです。例えば、LCDとパネルの間に空気層があると、数%の反射ロスが発生してしまいますが、これを粘着フィルムによって調整するのです。 波長吸収機能 粘着フィルムで光源から特定の波長を吸収することで、豊かな色彩の再現や省エネを実現できるという特徴があります。余分な波長を吸収することで、QDフィルムなどの光変換フィルムで効率的に色変換することが可能になります。また、ブルーライトなどのカットも可能になります。 UV吸収機能 波長吸収の中でも、太陽光による劣化で黄変するのを防ぐことに特化したのが、UV吸収の特徴です。ディスプレイに侵入する紫外線をカットして紫外線劣化を防ぐため、耐光性も発揮します。 粘着フィルムの種類と用途                       ここでは、上述したような特徴を持つ粘着フィルムについて、その種類と用途を見ていきましょう。粘着フィルムには、多くのメーカーが独自の開発で生み出した種類が豊富にあります。 弊社の製品情報についてはこちら 光学粘着タイプ 光学粘着タイプの中では、耐屈曲性に優れ、屈曲する部材の変形による損傷を防ぐことができる製品が注目されています。その耐屈曲性から、フレキシブルOLEDの偏光板とカバーガラスなどの接着に適したグレードの開発を各社が進めています。また、粘着フィルム自体の厚みを極めて薄くしつつ粘着力を確保することで、フレキシブル素材の機能を活かす開発の方向もあります。 拡散粘着タイプ 拡散粘着は、LCDパネルと偏光板間に用いられることが多いタイプです。光拡散効果やヘイズの調整を付与でき、モアレ防止やコントラスト向上に効果があります。用途としては、偏光板周辺部材やLCDバックライト向けの光学フィルムの層間粘着のほか、パネル同士の貼合などにも利用することがあります。 波長吸収タイプ UVカットや特定波長吸収などの効果を持つもので、用途としてはディスプレイの耐光性向上、バックライトの光源と光変換フィルム間に貼合して不要な波長を吸収し光変換を効率的に行うなどの例が挙げられます。 低透湿タイプ 水蒸気透過性が低いのが低透湿タイプです。これは、ディスプレイの防湿効果向上につながります。用途としては、中小型LCDの狭額縁対応による偏光板のPVAの脱色防止や、OLEDにおける有機EL発光層のバリア性向上があります。 屈折率制御タイプ 屈折率制御の代表例は、ITOフィルムの骨見え対策です。タッチパネルの構成に応じたITOパターンを不可視化する効果があります。 OCAフィルムの選び方 それでは、さまざまな種類がある粘着フィルムから、適切なものの選び方を見ていきましょう。 OCAを選ぶ際には、求める機能を向上させるためにどのような技術を持っているのか、各メーカーの素材を比べる必要があります。上述したような特徴が要求を満足できるものかどうかが重要です。製品に必要な機能を持つ粘着フィルムが選択可能なことはもちろん、粘着フィルム自体の厚みや構成を選択できることなどもポイントとして確認するとよいでしょう。また、セパレーターと呼ばれる剥離フィルムへの帯電防止処理や剥離力コントロールなどは、粘着機能以上に重要となることもあります。どのようなバリエーションを持っているかも確認しておくことをおすすめします。 まとめ 粘着フィルムとは光学的に様々な機能を有する製品で、LCDやOLED自体やそれ利用した製品に活用することで、コントラストや色再現性などを向上させて表示特性を改善します。粘着フィルムを選定する場合には、製品に必要な特徴・性能を網羅していることはもちろん、製品に合わせて粘着フィルム自体の厚みを選択できるかどうかや、供給形態がロール状かシート状かなどのチェックも大切です。(ZACROS株式会社では粘着剤の形態で供給可能なグレードもございます。) また、弊社の製品には一般的なOCAの用途以外にも、粘着耐久性を持つ粘着フィルムのマスタック®TSがあります。PHC方式による固定化や高意匠性による複雑形状への対応、表面平滑性による美しい光の反射を実現した製品は、「自動車部品の樹脂化」や「塗装レス」、「加飾用途」「樹脂接合用途」などに提供しています。 詳しくは弊社の製品情報をあわせてご覧ください。

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