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無粗化銅箔(低粗度銅箔)とは?次世代高速通信で無粗化銅箔が活用される利点や課題を紹介

第5世代移動通信システム(5G)に代表される大容量データの高速送受信の達成により情報化社会、スマート化社会の実現に近づいた今日、次世代高速通信に不可欠な基板材料として無粗化銅箔が注目されています。 従来の銅箔と比べて、表面が平滑で均一な無粗化銅箔は、高速通信における電子機器の性能向上に貢献する重要な材料であり、自社製品に採用したいと考える企業も多いのではないでしょうか。     この記事では、無粗化銅箔が高速通信対応の基板で活用される利点や課題をご紹介します。また、高速通信対応の基板において無粗化銅箔(導体)とプラスチックから成る絶縁材料(誘電体)の高密着性を実現した革新的な製品(「ZAC-LDC」:当社品)もご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 目次 無粗化銅箔(低粗度銅箔)とは 次世代高速通信で伝送損失の減少が求められる理由 無粗化銅箔(低粗度銅箔)の利点と必要性 無粗化銅箔(低粗度銅箔)の課題 藤森工業が無粗化銅箔と絶縁材料の高密着化に成功 藤森工業の接着剤付き銅箔:ZAC-LDCで次世代高速通信を支援 無粗化銅箔(低粗度銅箔)とは 無粗化銅箔※1とは銅箔の一種であり、通常の銅箔は樹脂材料との密着性向上(アンカー効果)のため、銅箔表面に粗化形状を設けています。それに対し、無粗化銅箔は粗化形状が無い、非常に平滑な銅箔です。 ※1 粗化形状の大きさの程度により、低粗度銅箔とも呼ばれます。表面の平滑性により、信号やエネルギーの損失(伝送損失)を抑える事が期待され、次世代高速通信に対応した電子機器に使用される半導体デバイスやプリント基板などで無粗化銅箔の活用が検討されています。 無粗化銅箔は高品質な通信システムを提供するための重要な役割を担い、電子材料技術の発展において不可欠な素材として期待されています。 次世代高速通信で伝送損失の減少が求められる理由 伝送損失とは、信号やエネルギーが伝送路や媒体を通過する際に、距離に応じて減衰や散乱が生じる度合を指します。有線通信や無線通信、光通信など様々な通信技術において、伝送損失を最小限に抑えることで信号品質の向上を図ることができます。 これは高速通信や長距離通信では特に重要であり、次世代高速通信の実現においても、構成材料の伝送損失を減少させることは必要不可欠です。信号の劣化を防ぎ、高速かつ信頼性の高い通信システムの構築には、適切な材料の選択と最適化が必要になります。 無粗化銅箔(低粗度銅箔)の利点と必要性 低伝送損失な通信回路の開発に、無粗化銅箔(低粗度銅箔)が必要不可欠な理由を詳しく解説します。 高速通信回路の実現 一般的な通信で使用されている信号は、周波数という波の数によって通信速度が決まります。周波数が高いほど送信できるデータ量が多いため、高速通信では高周波帯が使用されます。無粗化銅箔(低粗度銅箔)は極めて平滑な表面を持つため、特に高周波帯で優れた伝送特性を発揮することが期待されています。 高速通信では、信号の波形や位相が安定して保たれることが重要ですが、信号が流れる導体に無粗化銅箔を使用した通信回路は、極めて平滑な表面形状により、高周波帯での表皮効果※2による信号の減衰や歪みを最小限に抑えることができます。     ※2 表皮効果 導体に信号が流れる際、その信号が高周波であるほど、信号が導体の表面付近に集中する現象を「表皮効果」と言います。高周波信号を流した導体は信号の磁界によって渦電流が発生し、導体内部では信号の向きと逆方向に、導体表面では信号の向きと同方向に作用することで、高周波であるほど、信号は導体内部で打ち消され、導体表面に近い場所を通ることになります。その為、導体表面の凹凸が大きいと散乱や抵抗により、信号の損失が大きくなってしまいます。 高周波帯を使用する次世代高速通信の実現には、高周波信号を発する技術だけでなく、高周波信号の損失を抑える伝送技術が必要であり、これが平滑な導体の実用化として無粗化銅箔が求められる理由です。 導体に無粗化銅箔を用いることで信号の減衰や歪みが最小限に抑えられ、安定した高周波特性が得られます。 無粗化銅箔(低粗度銅箔)の課題 無粗化銅箔(低粗度銅箔)は、極めて平滑な表面を持つという特性ゆえ、プラスチックから成る絶縁材料との密着が得づらいという課題があります。また、密着したとしても強度が低い場合は温度変化などの外部要因で剥離が生じる可能性があるため、無粗化銅箔(低粗度銅箔)を部材として活用するため新たな接着技術や材料の開発が行われています。     無粗化銅箔(低粗度銅箔)に絶縁材料が密着しない理由 無粗化銅箔(低粗度銅箔)は、接着性樹脂などの絶縁材料との密着が難しい材料です。 通常、接着性樹脂などの絶縁材料と銅箔との異種材料の密着メカニズムは大きく二つに分類でき、一つは樹脂内の接着性官能基と銅箔の表面処理層との化学的な結合効果、もう一つは樹脂が銅箔表面の粗化形状に入り込み固化することによる、物理的な接合効果(アンカー効果)です。しかし、無粗化銅箔(低粗度銅箔)の場合、極めて平滑な表面を持つ為、後者の物理的な接合効果(アンカー効果)が発現されません。 また、高速通信対応の基板において銅箔だけでなく接着性樹脂などの絶縁材料も、伝送損失を最小限に抑えられるよう、接着性官能基を極力減らして化学的な結合効果が得られにくい設計となってきています。 これらにより、無粗化銅箔と接着性樹脂などの絶縁材料の密着強度が低くなるため、銅箔の表面処理層の改良や銅箔上に新たにプライマー層、接着層を設けるなど、密着性を向上させる取り組みが必要とされています。 密着しても剥離してしまう原因とその対応策 無粗化銅箔(低粗度銅箔)に接着性樹脂などの絶縁材料を密着できたとしても、密着強度が十分でない場合は密着部分に温度変化や機械的な応力などの外部要因が加わることで剥離が生じる可能性があります。   この課題に対処するためには、接着剤の処方設計や貼合条件の最適化により、熱膨張係数のマッチングや熱応力の軽減などの対応策が必要です。 藤森工業が無粗化銅箔と絶縁材料の高密着化 創立から100余年、革新的な技術の研究開発に取り組む藤森工業株式会社は、自社製品「接着剤付き銅箔:ZAC-LDC」の開発により、無粗化銅箔と絶縁材料の高密着化を実現させました。 接着剤付き銅箔:ZAC-LDCの特徴 ZAC-LDCは、無粗化銅箔と密着性の高い低誘電接着剤を塗工し、絶縁材料とも高い密着性を有する革新的な製品です。主な用途としては、高速通信用の回路基板への使用を想定しています。 無粗化銅箔のように極めて平滑な表面を持つ銅箔でも、高い密着力を発揮できるような接着剤の樹脂設計をしており、無粗化銅箔と絶縁材料を強力に貼り合わせることができます。また、銅箔厚み・接着剤厚みを柔軟にカスタマイズすることが可能で、被着体の絶縁材料に合わせて接着剤を設計できます。ZAC-LDCが実現できることについて、さらに詳しく解説します。 低誘電特性と高密着性を両立 ZAC-LDCは密着強度向上とともに業界最高水準である誘電率:2.8、誘電正接:0.0019(at 10GHz)を誇り、これを使用することで、より高度な低伝送損失と十分な密着強度を両立することが可能です。 以下は、ZAC-LDCの代表特性です。 用途構成Dk ※3Df ※3密着強度 ※5FPC用銅箔 12μm接着剤 6μm2.670.0020.6N/mm以上PCB用銅箔 18μm接着剤 3μm2.830.0020.8N/mm以上 ※3.4 測定環境:23℃/50%RH※5 構成:銅箔/接着剤/絶縁材料/接着剤/銅箔 優れた加工適性 無粗化銅箔と絶縁材料を密着させた後の回路基板製造工程(ビア加工、エッチング、めっき等)に対しても、優れた密着性や耐薬品性から、劣化や周辺に悪影響を及ぼすことなく、加工することが可能です。 安定したはんだ耐熱性 無粗化銅箔と絶縁材料の密着性の低さは大きな課題とされていますが、接合後の部品実装においても安定した品質を維持します。300℃/10分のはんだフロート条件でも銅箔と絶縁材料が剥がれる事はありません。※社内テスト時。 藤森工業の接着剤付き銅箔:ZAC-LDCで次世代高速通信を支援 極めて平滑な表面を持つ無粗化銅箔(低粗度銅箔)は5Gや6G(第6世代移動通信システム)における新たな製品開発で注目されている材料です。無粗化銅箔(低粗度銅箔)は、高周波帯において伝送損失を低減できる大きな利点がある一方で、絶縁材料との密着性が低いという課題があります。 そのような課題に直面するなかで、「藤森工業株式会社」は低伝送損失/熱硬化性接着剤を塗工した、低誘電接着剤付き無粗化銅箔「ZAC-LDC」を開発しました。 ZAC-LDCは、無粗化銅箔と絶縁材料に対して優れた密着性を保持し、絶縁材料に合わせたカスタマイズ対応が可能な製品です。 優れた伝送特性 ZAC-LDCは、低伝送損失材料としての優れた伝送特性を持っています。sub6(現在の5G通信の周波数帯)はもとより、ミリ波帯(本格的な5G通信や6G通信の周波数帯)を含めた広範囲にわたって、低伝送損失機能を発揮し、通信基地局やモバイル機器などの性能向上をアシストします。 ZAC-LDCは無粗化銅箔を採用しているため、電気信号の伝送損失を最小限に抑えられ、高周波帯での通信やデータ伝送において高い信号品質と安定性を実現します。次世代高速通信技術を駆使した、新製品の開発および機能拡充でお悩みの方は、ぜひこの機会に藤森工業までお気軽にお問い合わせください。 ZAC-LDC 資料ダウンロードはこちら

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5G向け材料開発の課題と新製品開発への挑戦の取り組み

スマートフォンの性能の進化には驚くばかりです。古い人間であるわたしは、手のひらに乗る端末でテレビの画質を大きく超える動画を編集して配信する時代が、生きているうちに来るなんて思ってなかったので、驚くほどの進化なのですが。 スマートフォンの小さなレンズでも、動画でさえ明るくくっきり撮れます。高解像度で長時間撮影もメモリ量によっては可能でしょう。それを編集することも手間は別にすれば今のスマートフォンはそれほど苦にしなくなりました。 でも、不満はあります。 まずは、バッテリーの持ち時間。日々改良がおこなわれているはずですが、自動車用のナトリウムイオン電池や固体リチウムイオン電池の話題は聞くものの、わたしはスマートフォン向けの大幅容量アップの話題をキャッチできておりません。 次に、スマートフォン使い過ぎによるギガ不足、通信速度制限。わたしは楽天モバイルを使っておりますがパートナー回線では5GB/月で制限されます。先日、少々の動画を送ると制限されてしまいました。 ギガ不足は現時点の4G LTE通信の設計による限界でもあり、5G通信では、通信速度、遅延、同時接続数を大幅に改善する規格ということから、通信速度制限なんて必要としなくなるものと考えます。 次世代=5G通信での課題 バッテリーの持ち時間についても貢献したいのですが、本ブログではサービスが始まり対応端末も増えてきた5G通信の話題を続けます。 5Gでは、ミリ波帯といわれる今の5倍から10倍ほど高周波となる周波数帯を使うことで通信速度が改善されます。しかし、それだけでは策定された5G規格の速度には届きません。その電波を複数束ねるなどいくつかの技術の組み合わせで実現を目指しています。さらに、アンテナが受けた電波を処理されたデータを高速でスマートフォン内に送る必要もありますので、あらゆる電子基板の高速伝送が必要となります。電子基板の高周波化が必要です。 高周波化すると、その信号波は山が小さく間隔も狭くなります。そのため信号を送る銅の表面の粗さや絶縁体の誘電特性によっては、信号波が鈍って、ちゃんと信号が伝わらなくなります。伝送損失が小さいことが求められ、絶縁体は低誘電なものが求められます。スマートフォンでは、小型軽量が当然であり、曲げられるフィルムタイプ電子基板であるFPCが多用されています。絶縁体はさらに曲がることが必要であり、表面がつるつるな銅箔としっかり密着することが必要です。 実用化されている技術として、低誘電である液晶ポリマー(LCP)フィルムによるFPCがあります。LCPは加工時の熱で柔らかくなりすぎると言われています。そのためにさらなる微細配線化は難しく、その太さの配線幅で使える範囲で使用されています。そのためより微細で高周波伝送が可能な基板材料が求められています。 次世代製品作りへの挑戦 まず、表面粗度の小さい密着しにくい銅箔へ密着し、これまでよりも低誘電な絶縁材料が必要です。そこで、低粗化銅箔に低誘電絶縁材料をコーティングし、その絶縁材料面を高耐熱の絶縁フィルムにラミネートするという設計をしました。現在、この構成でロール品を試作中です。 絶縁体の部分が、コーティングで作った層と高耐熱絶縁フィルムの層との積層体となります。この積層された状態で安定した誘電特性を保証しないとなりません。安定した精密コーティングはお任せください。 また絶縁フィルムへのラミネートは高温高圧が必要ですが、培ってきたラミネート技術で取り組んでおります。 コーティング技術とラミネート技術に材料技術を加えて次世代の製品づくりに挑戦 当社の品質保証体制があればこそ、次世代に必要とされる特性をもつ製品が社会に貢献できると考えています。その特性を発揮できる材料技術を、コーティング技術とラミネート技術を組み合わせて、お客様にとって使いやすい製品づくりに挑戦中です。 本コラムの内容は開発案件です。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。 【電子部材営業部 コラム担当】

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