離型フィルム入門講座(全5回)|第1回 離型剤の種類を選ぶ
- コラム
「離型フィルム」とは基材となるフィルムや紙に離型剤をコーティングしたもので、粘着面の保護や、樹脂成膜の下地に使用される製品です。シート状の粘着剤は被着体に押し当てるだけで容易に接着できるため、便利な製品ですが、使用直前まで粘着面を離型フィルムで保護する必要があります。そこで粘着製品の機能を最大限に発揮させるうえで重要となる離型フィルムの選び方を全5回に分けて解説します。
第1回 | 離型剤の種類を選ぶ |
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第2回 | 離型フィルムの基材を選ぶ |
第3回 | 離型剤の特性を知る |
第4回 | 付加機能を選ぶ |
第5回 | 総括 |
第1回目の今回は「離型剤の種類を選ぶ」。一言で”離型剤”と言っても種類は様々、対応する粘着剤や想定される使用状況により想定される用途に合わせた適切なものを選ぶことが重要です。そこで離型剤の種類と推奨される離型剤をご紹介します。
離型剤の種類
離型剤の種類は大きく分けて3種類(シリコーン系/フッ素含有シリコーン系/非シリコーン系)があります。
シリコーン系 | 高い離型性能を持ちカスタマイズがしやすい |
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フッ素含有シリコーン系 | シリコーン粘着剤に対し、高い離型性能を発揮する |
非シリコーン系 | 剥離が重いが非シリコーンのため粘着層へのシリコーン移行がない |
シリコーン系
シリコーン系は表面エネルギーの低い(-CH3)基が表面に出やすい構造となっており高い剥離性能を有します。
(-CH3)基以外の官能基を取り入れることにより、様々な特徴を発揮します。
<例>
フッ素含有シリコーン系
シリコーン系にフッ素を含有させています。シリコーン系粘着剤専用グレードです。対応するシリコーン粘着剤の種類に大きく影響を受けます。
フッ素を添加することによりシリコーン同士が結合しづらくすることで、スムーズに離型しやすくします。
<例>
非シリコーン系
剥離は重くなりますが粘着層へのシリコーン移行がありません。
シリコーンを嫌う電子用途や筆記性の良さから文具関係などによく使用されています。
長鎖アルキルアクリレート、長鎖アルキル変性高分子などがあります。
推奨される離型剤
使用する粘着剤の種類に応じて適切な離型剤をお選びください。
粘着剤 | 推奨離型剤 |
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ゴム系 | シリコーン系 |
アクリル系 | シリコーン系 |
シリコーン系 | フッ素含有シリコーン系 非シリコーン系 |
ウレタン系 | シリコーン系重離型タイプ 非シリコーン系 |
対ゴム系粘着剤
幅広い対象に対して良好な粘着性を発揮します。ただし耐候性、耐熱性はほかの粘着剤より劣ります。流動性が良いため、投錨効果の影響に配慮が必要となります。
→ シリコーン系離型剤が多く選択されています。
対アクリル系粘着剤
再離型が必要な工程用・保護用から強粘着の固定用まで幅広い物性調整が可能で、透明性、対候性、耐熱性も優秀です。電子・光学分野での用途が増えており、精密かつクリーンな対応が求められます。
→ 対応できる範囲の広いシリコーン系離型剤が適しています。
対シリコーン系粘着剤
他の粘着剤では粘着しないシリコーン樹脂やフッ素樹脂にも粘着します。使用可能温度域が広く、耐薬品性、耐水性に優れています。また、微粘着タイプは貼付作業時のエア抜け性に優れている為、ディスプレイの保護用途に広く使われています。
→ 側鎖にフッ素を取り入れたフッ素含有シリコーン系や、微粘着タイプの場合は非シリコーン系が選ばれるケースも多く見受けられます。
対ウレタン系粘着剤
貼付作業時のエア抜け性に優れています。糊残りなく剥がしたい再剥離用途の保護フィルムに適しています。シリコーン系に比べると耐候性などは劣りますがコスト面では有利です。
→ シリコーン系重離型タイプ、または非シリコーン系が選択される場合が多いです。
その他のポイント
離型剤の分類とは別離型フィルムが使用される状況によっても考慮が必要な場合があります。
硬化後の粘着剤に離型フィルムを貼付する場合
→ 粘着剤に合わせた離型剤を選択します。
離型フィルムにダイレクトコーティングする場合
→ 溶剤を多く含んだ粘着剤がコーティングされることが多いため耐溶剤に優れる離型剤を選択します。
溶融した粘着剤(ホットメルト)に離型フィルムを貼付する場合
→ 高温で溶融させる為、基材の耐熱性が必要となります。ホットメルト成分の種類に応じて、対応できる範囲の広いシリコーン系離型剤から選びます。
半硬化タイプ(Bステージ)接着剤を離型フィルムにコーティングする場合
→ 接着剤が半硬化の場合、粘着性はとても弱い為、繊細な離型力が必要になります。
電子、電気用途に多いため非シリコーン系から選択します。
Coffee break
コロナ禍の中、半導体不足の為に自動車の生産が遅れるなどの問題が発生していますが、今後も拡大してゆくと考えられる「半導体」関連業界にも離型フィルムは多数使われています。
半導体から、その下流である電子、電気分野では、シリコーン移行のコンタミによる接点障害(電流が阻害される障害)が懸念されており、非シリコーンタイプの離型フィルムが注目されています。
非シリコーンタイプでは、従来苦手としてきた軽剥離領域に対応できるものも開発されており、大きな発展の可能性がある分野です。
次回は、離型フィルムを選定するにあたり離型剤と並ぶ重要な要素である基材について掲載します。離型フィルムは基材に離型剤をコーティングしたものなので用途に合わせて基材も選定する必要があります。
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