剥離フィルムとは?剥離紙との違い、種類や用途まで徹底解説
剥離フィルムとは
剥離フィルムは基材となるプラスチックフィルムに剥離剤をコーティングしたもので、粘着製品の粘着面の保護や、樹脂成膜の下地に使用される製品です。 この記事は、剥離フィルムの用途や、剥離剤や基材の種類などの剥離フィルムを選定する際にも重要となる要素を解説しています。
剥離紙と剥離フィルムの違い
本コラムでは「剥離フィルム」は、PETやPP、PEなどのプラスチックフィルムに剥離剤を塗布したもの、また「剥離紙」は紙に剥離剤を塗布したものと定義しています。剥離紙と剥離フィルムとでは、基材となる紙とフィルムの特性による違いが生じます。
類語として「離型フィルム」「リリースライナー」「セパレーター」などの呼び名がありますが、すべて「表面にくっついた粘着性物質を剥がせる」性能を持ったシートを意味します。
ただし、「セパレーター」は、電池・建築、その他さまざまな業界でも使われ、その場合は「剥離フィルム」ではないものを指すこともあります。
剥離フィルムの用途
剥離フィルム・剥離紙は先述の通り粘着面の保護や、樹脂成膜の下地に使用されていますが、特に剥離フィルムは、プラスチックフィルムの「透明性」「クリーン性」を活かした用途に使われています。「透明」かつ「クリーン」であることで、剥離フィルムを貼付した状態での粘着製品の外観検査を可能にしています。
剥離フィルムは、自動車製造・電子機器製造・医療機器・食品包装などの様々な分野で利用されています。
粘着層保護用
シリコン離型フィルムは、粘着層を外部の汚れやダメージから保護する役割を果たします。
基材に粘着剤を塗布し、その上に剥離フィルムをラミネートすることで粘着層を保護することが可能です。両面粘着の場合は、粘着層の両方を保護するために剥離フィルムを使用します。
【粘着層保護用としての使用例】
•電子機器の基板やコンポーネント
•プリント基板の表面や銅箔
•接着剤や粘着テープ
•インクジェット印刷基材
•自己粘着ラベルやシールなど
剥離フィルムのラミネートにより、粘着剤との間にスムーズな離型層が形成されることで、剥離時に粘着剤をきれいに剥がせます。また、粘着剤の表面に付着する不要な汚れや粒子を最小限に抑えることが可能です。
キャスト用
キャスト用途では、剥離フィルムの上に樹脂やセラミックスなどの材料を塗布し、固める目的で使用されます。
一度材料が硬化した後や打ち抜き後でも、簡単に剥離フィルムを剥がすことができます。このプロセスは、薄膜の形成や精密なパターンの形成、製品の製造や加工工程において重要です。
【キャスト用としての用途例】
•ディスプレイ基板
•フィルム状の薄いシート
•パッケージング材料
•キーホルダーやモデルパーツなど透明な樹脂製品
•セラミックスや陶磁器の材料
剥離フィルムによって、材料の塗布や硬化後の取り扱いが容易になる他、製品の均一な表面形成や高い離型性、保護効果などのメリットももたらします。
転写用
剥離フィルムの転写用途では、剥離フィルムの上に材料を塗布し、転写させることでグラフィックの付与やマット調の表面効果を得ることができます。
【転写用としての用途例】
•衣類やカーテンへのロゴ、イラスト、テキストの転写
•光学機器、ディスプレイ、自動車の内装パーツ、家具に対するマット調の付与
•看板、広告、ポスターに対するグラフィックデザイン
•木材やプラスチックの表面への木目・石目の転写
•ネイルシールや一時的なタトゥーデザインの付与
剥離フィルムを用いた意匠性の転写は、デザインの再現性や耐久性が求められるさまざまな産業やクリエイティブな分野で活用されています。
プレス用合紙
剥離フィルムは、凹凸のある部材との熱プレス時にも使用できる耐熱性や機械的強度を備えています。
例えば、電子部品や機械部品の表面を保護しつつ、凹凸に追従することによって、加熱で緩んだ接着剤の染み出しを防ぐことが可能です。
【プレス用合紙としての用途例】
•スマートフォン、タブレット、ゲーム機、ハードディスクの部品
•自動車のドアパネルやフレーム、エンジンカバーなど
•家電製品のプラスチックパネル、ボタン、ハウジングなど
•セラミックス製の精密部品
上記のように自動車産業や電子機器製造、家電製品製造、医療機器製造、セラミックス産業など、さまざまな製造業界において活用されています。
シリコン離型剤が向かない用途
シリコン離型剤は、製品の加工や組み立てのプロセスによって、使用が向かない場合があります。
例えば、シリコン離型剤は表面の非粘着性が特徴であることから、塗装や接着が必要な場面では採用できません。また、シリコン離型剤は表面に残留する可能性があり、印刷の品質が低下する可能性があります。
他にも、電気機器の基盤やコンポーネントにシリコン離型剤が付着した場合、信号の干渉や機能不良の原因となるため、電子機器の組み立てには向いていません。
製品や製造プロセスによって、シリコン離型剤を採用できるかどうかが異なるため、詳細な製品情報やメーカーの指示を確認することが重要です。
剥離フィルムの基本構成
剥離フィルムは基材となるフィルムに剥離剤を塗布した製品で、剥離剤を片面塗布した基本的なものから、両面に剥離剤を塗布したもの、帯電防止層・剥離層を複層コーティングしたものがあり、剥離フィルムを使用する粘着製品の形状や使用環境によって構成を選びます。
下記では基本構成である「片面剥離」と「両面剥離」を取り上げます。
基本構成①:片面剥離
基材フィルムの片面のみに剥離剤をコーティングしたものです。帯電防止処理を施す場合もあります。主に保護フィルムやラベル・シールなどの片面だけに粘着面がある製品や樹脂成膜のキャリアシートとして使用する際に使われます。
基本構成②:両面剥離
基材フィルムの両面に剥離剤をコーティングしたものです。帯電防止処理を施したり、面ごとに異なる種類の剥離剤を塗る場合もあります。両面テープなどに用いられます。
剥離剤の種類
剥離フィルムに使われる剥離剤の種類は「シリコーン系剥離剤」「ノンシリコーン系剥離剤」「フッ素含有シリコーン系剥離剤」の三つがあります。
シリコーン剥離剤
剥離性能とカスタマイズ性が高く、様々な用途に使用されている汎用性の高い剥離剤です。
ノンシリコーン剥離剤
シリコーン不使用のため被着体へのシリコーン移行を完全に防止する剥離剤種です。フィルム上に塗った塗料の親和性(濡れ性)が良好です。
フッ素含有シリコーン剥離剤
シリコーン系にフッ素を含有させたタイプの剥離剤のため、シリコーン粘着剤と好相性の剥離剤です。
剥離フィルム・剥離紙の基材
基材を選ぶ際には材質のほか、厚みも選定基準となります。
フィルム基材(PET)
高透明タイプや着色されたもの、熱収縮率を調整されたものなど、ラインナップが豊富なため汎用的に使用されているフィルム基材です。
フィルム基材(PE,PP等)
PEやPPのほか、要求性能や使用環境によりPCやPES、PEEK、PI、LCPなどを使用するケースがあります。
紙基材
グラシン紙・目止めコート紙・PEラミネート紙・PETラミネート紙などの原紙への剥離剤の浸漬を防ぐ加工が施された材料を使用します。
剥離フィルムと粘着剤の貼合方法
基材に粘着剤を塗工し乾燥後に粘着面と剥離フィルムを貼り合わせて粘着剤を保護する方法と、剥離フィルムに粘着剤を塗工する方法があります。
剥離力
「剥離力」は剥離フィルムを粘着力のあるシールやテープなどの粘着面から剥がす際に生じる抵抗を指します。主に剥離角度・剥離速度・経時変化の三つの要素により「剥離力」は変動します。
付加機能
塗料をコーティングすることにより、印刷・帯電防止・表面粗化・表面平滑化・スクラッチ防止など剥離以外の機能を付与することができます。
剥離フィルムの選び方
剥離フィルムを選ぶ際は粘着剤や塗料の材料種や製品の形状、そして必要とする性能や使用環境*を洗い出したうえで、メーカーに問い合わせると迅速に提案を受けられます。*ご使用時の加熱温度、クロスニコル検査等
ZACROS株式会社の離型フィルムのラインナップ
剥離フィルム:シリコーンタイプ
PET基材の剥離フィルムです。クラス100~のクリーン環境で製造しており、様々な剥離強度のラインナップを取り揃えています。剥離面や付加機能のカスタマイズも対応しています。
剥離フィルム:ノンシリコーンタイプ
シリコーン不使用のため、精密電子部品や粘着力の経時変化を心配される用途に適した剥離フィルムです。シリコーン系に比べて低い接触角を示し、優れた濡れ性を特徴としています。
剥離フィルム:フッ素タイプ
シリコーン系にフッ素を含有した剥離剤をコーティングした剥離フィルムです。シリコーン系剥離剤では剥離しないシリコーン系粘着剤に適しています。
剥離フィルム:Zシリーズ
シリコーン系PET基材剥離フィルムの規格品シリーズです。剥離強度と製品幅を選択し、小ロット・短納期でお受け取りいただける製品です。(剥離強度:軽~重の6タイプ/製品幅:45mm~1,020mm
剥離フィルム:マットコートタイプ
コーティングによるマットコートと剥離処理を施した剥離フィルムです。サンドブラスト処理を用いないため、残渣の発生がありません。剥離剤はノンシリコーンタイプで、剥離力の調整が可能です。マット調を塗料に転写させて意匠性の付与ができます。