ガラスクロスとは?原材料となるガラス繊維の種類から使用用途まで徹底解説
- コラム
さまざまな分野の産業において、耐熱性や耐久性に優れたシートであるガラスクロスが重宝されています。
ガラスクロスは、材料となるガラス繊維の種類や配合する成分によって異なる特性を持つため、自社製品により適したものを選定することが重要です。
この記事では、ガラスクロスやガラス繊維の種類、使用用途まで分かりやすく解説します。
ガラスクロスとは
ガラスクロスとは、ガラス繊維(ガラスヤーン)を主成分として製造される織物のことです。
溶かしたガラスを薄く引き伸ばしながら繊維状にしたものであり、工業用として生産された無機繊維としては最初のものでもあります。
ガラスクロスは、自動車産業や電子機器の製造、建築の材料などの分野で使用されており、耐熱性・耐薬品性・耐摩耗性・高強度・耐久性などに優れているのが特徴です。
採用するガラス繊維の種類や織り方によって、異なる特性や強度を得られます。そのため、使用する産業や目的に応じて適切なガラスクロスを選ぶことが重要です。 ガラス繊維の種類 ガラス繊維によって異なる特性をおさえておくことで、自社の事業・産業に必要なガラスクロスを選びやすくなります。
ここでは、代表的な5種類のガラス繊維を詳しく紹介します。
Eガラス繊維(無アルカリガラス )
Eガラス繊維は、ガラス製造で不可欠なアルカリ成分をほとんど含まない、無アルカリガラスの一種です。 溶解温度を下げるアルカリ成分が少ない分、耐熱性の高いホウ素を使用しているため、熱膨張率を抑えながら急激な温度変化に対応できるようになっています。
ガラス繊維の中でも比較的低コストであり、非常に優れた電気絶縁性を誇り、繊維強化プラスチック(FRP)として自動車産業や電子機器の製造、建築の材料など幅広いシーンで活用されています。
Sガラス繊維
Eガラス繊維よりも高強度、高弾性に優れているのがSガラス繊維です。
アルミナ(AL203)という弾力性を高める元素を多く含んでいるのが特徴で、Eガラス繊維よりも引張弾性が約20%、引張強度が約35%高いです。さらに酸化マグネシウムも多く含まれていることから、耐熱性にも優れており、熱膨張係数が小さいというメリットもあります。
ただし、融解温度が相対的に高いことから、Eガラス繊維よりも数倍高いコストで取引されています。航空宇宙・軍事・スポーツ用具などの用途に活用されています。
Cガラス繊維(含アルカリガラス )
アルカリ成分を多く含んでいるのがCガラス繊維です。 融解温度を下げられるアルカリ成分ですが、酸への耐性を向上させる効果にも期待できます。
Cガラス繊維を含んだガラスクロスを採用した製品は、酸化しやすい屋外での長期間使用を可能にします。
耐酸性能力の高い製品や材料を製造したい場合に、Cガラス繊維が有効な選択肢となります。
ARガラス繊維
ARガラス繊維は、ガラスクロスの耐アルカリ性能を向上させられる繊維です。 機械的強度と破壊靭性が高いジルコニア(ZrO2)という成分を多く含んでおり、優れた耐アルカリ性を発揮します。 ガラス繊維とコンクリートの併用を実現させたのがARガラス繊維であり、コンクリート建造物の修復剤でも活用されています。
ECRガラス繊維
Eガラスを溶解する際に、発生・揮発するホウ素とフッ素分子は、人体および環境に有害な成分であることが知られています。 ECRガラス繊維は、有害性のあるホウ素(B2O3)とフッ素分子(F2)を含まない素材です。
耐蝕性(耐酸性)・耐水性・耐熱性に優れ、Eガラス以上の機械的強度と同等の電気特性を備えているため、ガラスクロスの主成分でより需要が高まることが期待されています。
人にも環境にもやさしいガラス繊維ですが、酸化チタンを使用しているため調達コストが高い傾向にあります。
ガラス繊維を使用した不燃シート「フジエース」
フジエースはガラス繊維を織り込んだガラスクロスに耐火コーティングを施し、耐火性・強度を向上させた製品です。
ガラスクロスの使用用途
特性の異なるガラス繊維を加工して作られたガラスクロスは、さまざまな分野の産業で活用されています。 ここからは、ガラスクロスの使用用途について詳しく解説します。
FRTP(ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック)
FRTPは、熱可塑性樹脂をガラス長繊維で補強した繊維強化プラスチックです。 以下のような分野でFRTPが使用されています。
- 自動車部品(バンパー、ドアハンドル、エアバッグカバー、エンジンカバーなど)
- 電気・電子部品(コネクター・リレー・スイッチ・プリント基板など)
- 機械部品(ギア、ベアリング、ブッシュ、ローラーなど)
- その他(スポーツ用品、医療用品、建築材料)
熱可塑性樹脂とは、加熱によって溶けて再使用できる樹脂のことで、ポリカーボネートやポリプロピレン、ABS、塩化ビニールなどが代表されます。
FRTPは、上記のような熱可塑性樹脂にガラス繊維を補強材として混ぜたり、射出成形したりすることで作られます。金属と比較して軽くて強度があり、優れた耐熱性と耐摩擦性も備えています。 熱で変形しにくく寸法安定性を向上させる材料であり、FRPに並ぶ代表的な複合材料として重宝されている材料です。
FRP(ガラス繊維強化熱硬化性プラスチック)
FRPは、樹脂プラスチックにガラス繊維や炭素繊維などを混合させた複合材料です。 以下のような分野でFRPが使用されています。
- 建築材料(洗面台、浴槽、ユニットバス、浄化槽、窓枠など)
- 航空機・宇宙機(アルミニウム合金の代替材料)
- 船舶(小型船舶の船体、ボート、ヨットなど)
- 車両(自動車や鉄道車両の内外装など)
- スポーツ用品(テニスラケット、ゴルフクラブなど)
- その他(信号機、プリント基板、郵便ポスト、楽器など)
FRPに使用されている樹脂は、不飽和ポリエステル・フェノール・エポキシ・ビニルエステルなどの熱硬化性樹脂と、ポリプロピレン・ナイロン・ABSなどの熱可塑性樹脂です。
樹脂をガラス繊維で補強することで、優れた電気絶縁性・耐熱性・寸法安定性を備えています。高精度な部品や材料の製造において、非常に需要の高いガラスクロスです。
GRC(ガラス繊維強化セメント板)
GRCは、従来の技術では成し得なかった、セメントまたはセメントモルタルを耐アルカリガラス繊維で補強したガラスクロスです。 以下のような分野でGRCが使用されています。
- 建築(外壁カーテンウォール、内壁、内外装部材、天井・軒天井、床・屋根、建築部品など)
- 土木(道路用、鉄道用、水管理用、農業用、産業用、景観材など)
- その他(モニュメント、記念像、文化財など) かつてのセメント製品よりも、軽量で耐衝撃性や曲げ強度が大幅に優れていながら、繊細で自由な造形にも対応できます。
GRCは、成形や施工が容易なことから、工期や建設コストの低減にも寄与するガラスクロスです。
FRR(ガラス繊維強化ゴム)
FRRとは、表面に屈曲性を付与し、ゴムとの接着性を高める加工をしたガラス長繊維を用いてゴムを補強した複合材料のことです。 以下のような分野でFRRが使用されています。
- ベルト類(タイミングベルトやコンベヤベルトなど
- タイヤ(カーカス層やベルト層など)
- ホース(エアーホースや水道ホースなど)
FRRの特徴は、引っ張りの強度や耐熱性の高さです。その特性から、車両のタイヤやベルト類などの苛酷な屈曲疲労のかかる部品で活用されています。 より快適な交通を実現させるために不可欠な素材として、近年注目を集めています。
ガラスペーパー
ガラスペーパーとは、ガラス繊維を主体とした湿式抄紙法やガラス繊維単体で抄紙のことです。湿式抄紙法では、ガラス繊維とパルプ・合成繊維・エンプラ繊維などを配合します。 以下のような分野でガラスペーパーが使用されています。
- 建材(屋根材、床材、壁紙、断熱材、防水・防蝕・防災用シートなど)
- 電気・電子機器(エアコン、テレビ、LED照明、アミューズメント、自動車などの基板材料や絶縁体、フィルター材など)
- 産業資材(下水管や電力管、各種FRP材として社会インフラや生産現場など)
ガラスペーパーは、紙と比較して耐水性が高く、引っ張りに方向性がないのが特徴です。この特性から、建材やフィルターなどで活用されています。
織物
ガラス繊維を縦横に組み合わせて作った織物は、非常に幅広い用途で活用できます。
- 工業用資材(ダクトの保温・保冷、防水・防蝕防災用のシート材・テープ、集塵装置、アルミ濾過用など)
- 建材(カーテン、壁張り、防虫網など)
縦と横どちらにも強度が高いのがガラス繊維の織物の特徴です。 ガラスクロスは、加工で配合する成分や繊維によって、耐久性・耐熱性・耐水性・耐衝撃性などが異なります。
産業にガラスクロスを導入する際は、どのような分野に適した特性を持っているのかを細かく調べましょう。 ガラスクロス(ガラス繊維)を使用する際の注意点 ガラスクロスを生産・製造に導入する際は、以下の注意点やデメリットも理解しておきましょう。
- ガラス繊維に触れるとチクチクしたり痒くなったりすることがある
- ガラス繊維を加工する際に吸引する可能性がある
- ガラスクロスの耐熱温度は高くても250℃〜350℃くらい
ガラス繊維のチクチクに関しては一時的なものであり、皮膚炎やアレルギーの原因にはなりません。また、粉塵のように吸引する可能性がありますが、人に対する発がん性が一切認められていないため安全です。
ガラス繊維をガラスクロスに加工した場合は、再飛散がほとんどなく、健康に影響を与えることはありません。
耐熱温度は、ガラス繊維の密度や種類によって異なりますが、一般的に250℃〜350℃とされています。したがって、製造において500℃以上や1,000℃といった耐熱温度を求める場合、ガラスクロスは適していません。
不燃シート「フジエース」なら耐熱温度が約500℃
ガラスクロスよりも耐熱性の高い不燃シートを必要とするシーンにおすすめなのが、ZACROS株式会社が開発した「フジエース」です。フジエースの特徴や使用用途を分かりやすく解説します。
耐熱温度が約500℃
フジエースは、不燃ガラス繊維織物と特殊な耐熱塗料を含浸塗工させた不燃シートです。耐熱性がガラスクロスよりも非常に優れており、約500℃までの熱に耐えることができます。耐熱遮断性や断熱性も高く、炎や煙をほとんど発生させません。
引張強度と引裂強度が高い
フジエースは、引張強度と引裂強度が高く、高性能な不燃シートです。 耐久性に優れていることから、溶接・溶断作業に発生するスパッターやノロに対応でき、安全な作業環境の維持に寄与します。 柔軟性があり裁断・縫製加工が容易 優れた耐熱性・耐久性がありながら、柔軟性も備えているのがフジエースの魅力です。
裁断・縫製加工が容易であるため、クライアントの要件に合わせた保護カバーや不燃間仕切りシートなどを製造できます。
発がん性なく安全に使用できる
フジエースには、アスベストのように発がん性物質や有害物質が発生しません。 労働安全衛生上で非常に優れた不燃シートであり、グレードに応じて国土交通省認定や不燃材A種認定、各種認定などを取得しています。
撥水性があり屋外でも使える
撥水性を備えたフジエースは、屋内外問わず、さまざまな分野の産業やシーンで利用されています。 電設ケーブルの保護カバーや防火防炎垂れ幕、断熱ダクトカバーなど、主に工業用資材の製造で幅広く活用できます。
2種類のラインナップを用意
フジエースは、厚さや引張強度、防炎規格などが異なる2種類のラインナップで提供しています。導入を検討される際に参考にしてください。
1050mm×30m巻930mm×50m巻0.8<>td縦: 1000インストロン型引張試験
測定項目 | FG-4300 | FG-4010 | 試験方法 |
---|---|---|---|
寸法 (幅mm×巻m数) | 厚さ(mm) | 0.2 | マイクロメーター |
重量 (g/m2) | 930 | 400 | メトラー電子天秤 |
引張強度 (N/25mm) | 縦:1960 | 縦:1000 | インストロン型引張試験 |
引張強度 (N/25mm) | 横:1000 | 横:1000 | 引張速度 300mm/min |
引張伸度(%) | 縦:6 | 縦:6 | つかみ間隔 200mm |
引張伸度(%) | 横:3 | 横:2.5 | サンプル巾50mm |
引裂強度(N) | 縦:24.5 | 縦:70 | シングルタング法 |
引裂強度(N) | 横:24 | 横:70 | 引張速度 500mm/min |
防炎規格 | JIS-A-1323-1995 A種合格 | UL94燃焼クラス V-0相当 | – |
国土交通省 不燃材適合品 | ◯ | – | – |
産業資材の製造はZACROS株式会社にお任せください!
ガラスクロスは、高温環境に耐えられる耐熱性や優れた耐久性を持ち、幅広い産業で活用されています。 主成分となるガラス繊維の種類や配合する成分・素材によって特性が異なるため、自社製品の製造と親和性の高いものを選ぶことが重要です。 ZACROS株式会社では、ガラスクロスよりも非常に優れた耐熱性や耐熱遮断性を備えた不燃シート「フジエース」を提供しております。 発がん性物質や有害物質を含まない安全なフジエースは、撥水性や柔軟性も備えており、屋内外問わず、産業資材の製造に活用できます。 貴社の課題と目的に応じたソリューションをご提案できますので、ぜひこの機会に「ZACROS株式会社」までお問い合わせください。
▶安全衛生面でも非常に信頼度の高い不燃シート「フジエース」の製品情報はこちら
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